文化的自己観の個人への反映である相互独立性と相互協調性について, 日本文化での発達過程を探ることが本研究の目的である。既存の尺度 (高田他1996) に加え児童・生徒用尺度を作成した上, 児童期後期から老人期に亘る横断的資料により発達的変化を検討し, 更に日本人青年の相互独立性と相互協調性を西欧人青年と比較した結果,(1) 日本人青年は西欧人青年に比べ相互独立性が低く相互協調性は高く, 相互協調性が相互独立性を凌ぐ傾向が児童期から青年期を経て若年成人期まで見られる,(2) 相互独立性は小学校高学年から中学生にかけて低下するが, 若年成人期以降は一貫して上昇する,(3) 相互協調性は小学校高学年から中学生にかけて低下するが, 青年期には高い水準を維持した後, 成人期では減少し老人期で再び上昇する, という結果を得た。これらの知見から, 文化的自己観が自己スキーマに反映する際の2種の過程が示唆された。