本研究では個人のさまざまな失敗傾向を捉えるための質問紙を作成した。Broadbent et al.(1982) の Cognitive Failures Questionnaire (CFQ) 25項目と新たに作成した20項目を用いて大学生622名に調査を行ったところ, もの忘れや不注意による失敗である“アクションスリップ”, 処理できる情報の範囲が狭まる“認知の狭小化”, 状況の見通しが悪く行動のプランが不十分なために起こる“衝動的失敗”の3因子が得られた。これらの失敗傾向尺度の内的一貫性や再検査信頼性は満足できるものであった。さらに TAIS (Test of Attentional and Interpersonal Style) 及び短期記憶課題の遂行とこれらの失敗傾向の関係を調べたところ,“アクションスリップ”と, 内外の刺激に注意がとらわれやすい傾向を示す尺度との間に有意な相関がみられた。“認知の狭小化”でも同様の相関がみられたが, それに加えて, 多くの情報を有効に処理できることを示す尺度との間に有意な負の相関がみられ, また数字スパンとの間にも弱い負の相関があった。“衝動的失敗”と注意の尺度や数字スパンとの間に相関は認められなかった。これらの結果はそれぞれの失敗傾向尺度の構成概念妥当性を裏付けるものと考えられる。さらに妥当性を検証し, 実際の失敗行動生起のメカニズムを理解するためには, 今後はこれらの失敗傾向に対する実験的検討が必要であろう。