本研究では, 対人恐怖心性と親子関係像との関連を, 内的ワーキングモデル (IWM) の観点から検討した。親子関係像については, 内在化された体験に接近するため, 認知レベルと投影レベルとから調べた。回答を得た大学生153名の中から, 対人恐怖心性質問紙で対人恐怖心性の高い者 (H群40名) と低い者 (L群39名) とを抽出し, 子どもの頃の親との関係認識質問紙と回想動的家族画法との結果を比較した。質問紙では, H群は母親に対して, 親密さも強いが不信も強いという二重性を示した。父親に対しては, 親密さ, 不信, 怯え全因子でH群はL群より否定的であった。家族画では, H群はL群より交流し難い両親像を描いた。以上より, 対人恐怖心性が高いほど (1) 親子関係像は肯定的なまとまりをもたない,(2) 受容的な親の存在体験が希薄, との仮説が支持された。対人恐怖心性と親子関係像とに特有の関連が認められたことにより, 対人恐怖心性高群を, 不安定な親子関係像を基型とするIWMで捉える妥当性が示された。