本研究の主要な目的は, 自己認知と精神的健康の関連を探ることであった。そこでまず, 青年 (大学生, 専門学校生) を対象にしてポジティブ・イリュージョンならびにネガティブ・イリュージョン現象を確認し, その結果に基づいて, 自己認知尺度を設定した。本研究でのポジティブ・イリュージョンならびにネガティブ・イリュージョン現象は, 外山 (1999) の結果と同様であった。また, 自己認知が精神的健康と結びついていることが示され, 自己高揚的な認知をしている人々は, 精神的により健康な生活をおくっていることが明らかにされた。自己を平均的だとみなす認知をしている人は, 被調査者集団においてネガティブ・イリュージョンが見られた側面においてのみ, 自己高揚的な認知をしている人と同様に精神的に健康であった。しかし, 被調査者集団においてポジティブ・イリュージョンが見られた側面においては, 自己を平均的だとみなす認知をしている人は, 自己卑下的な認知をしている人と同じくらい精神的に不健康であることが明らかになった。