児童と青年の「言論の自由」の概念を探るために, 研究1では, 小4生, 小6生, 中2生, 大学生を対象に, 抽象的理解とスピーチ大会場面における制限判断, および両者の関連について調べた。抽象的には小4生でも大部分の者が,「言論の自由」を大切であると考え, 特徴を理解していた。制限判断では, 従来検討されていなかった判断材料として, 自由と抵触する問題の領域と, 受け手 (聴衆の属性) を用意し, 先行研究において整理されていなかった2種類の判断 (「行為の制限」と「法による制限」) について検討した。その結果, 領域を考慮して制限判断がされ, スピーチ内容が道徳以外の領域に属するとき, 小学生から中学生にかけて自由を支持する程度に差が生じた。聴衆の属性は考慮されなかった。また, 小4生, 小6生, 中2生は, 2種類の制限判断を区別して判断しなかった。そして, 学年,「言論の自由」の意義づけの質, および自由を制限する法があっても話してよいかどうかについての判断の差が, 制限判断に関係した。研究2では, 小学生から中学生にかけて, 制限判断において学年差が生じることを確認した。これらの結果を基に,「言論の自由」の概念の発達を支える要因について議論した。