本研究では, 知的障害者のメタコミュニケーションの機能の特性について検討した。特に, 伝達相手にとって明確になるように相手の特性に応じて発話内容を構成するためのメタコミュニケーションについて検討した。知的障害者30名 (MA3:9~6:10・CA21:0~53:0の知的障害者15名とMA7:8~10:8・CA15:10~18:2の知的障害者15名) と, 非知的障害児20名 (6歳児10名, 9歳児10名) を対象に比較検討した。課題は同じ物語内容を発達レベルや関係性の異なる複数の他者に伝達することであった。これらの伝達内容の違いを分析した結果, 以下の3点において知的障害者の方が非知的障害児に比べ, メタコミュニケーションがより機能していたことが示唆された。言語的な側面については,(1) 相手の特徴を正確に分析し, 相手の受け止め方を予測することのできる推理力をもち, そうしようとする志向性がある,(2) 相手の特性を今直面しているコミュニケーション場面に適用し効果的に行うという点であった。また, 非言語的な側面については,(3) 相手の注意や関心を自分に向けるための行動要求や伝達内容をわかりやすく伝えるための行動的工夫がみられるという点であった。