本研究の主な目的は, 子どもにおける社会的比較の認知の発達的変化について検討することであった。被調査者は, 幼稚園年長児50名と小学生319名の合計369名であった。子どもは3つの社会的比較行動 (「直接的な比較の発話」,「仲間の作業への注意」,「進度のチェック」) の場面について, なぜ仲間がそのような行動をするのかについて尋ねられた。本研究の結果より, 子どもは学年が上がるにつれて, 直接的な形態の社会的比較 (「直接的な比較の発話」や「仲間の作業への注意」) をネガティブなものとみなし, 間接的な形態の社会的比較 (「進度のチェック」) を, 自己評価の目標を満たすことにおいて有益であるとみなすことが示された。これらのことより, 子どもは学年が上がるにつれて, 社会的比較のネガティブな側面に気づき, それに伴い自己評価の目標を満たすために, これらの比較行動をより社会的に受け入れられる形で適応させていくようになると示唆された。