本研究は, 青年期における対人恐怖心性と自己愛傾向との関連について検討することを目的とした。大学生336名を対象として対人恐怖心性尺度と自己愛人格目録の質問紙を施行した。分析の結果, 対人恐怖心性と自己愛傾向には有意な負の相関が見られた。これは, いくつかの対人恐怖心性と自己愛傾向の関連のパターンが混在している状態であるという解釈可能性を示していた。また, クラスター分析を行った結果, 対人恐怖心性と自己愛傾向のパターンには4つサブタイプがあることが示された。これらは, 臨床的な知見を参考にすると第1クラスターは,「純粋な」対人恐怖であり, 第2クラスターは,「過敏型」自己愛人格であり, 第3クラスタ」は,「ふれ合い恐怖的心性」に類似したものと推測され, 第4クラスターは,「無関心型」自己愛人格であるとそれぞれ解釈された。このなかで第2クラスターと第4クラスターは, 対人恐怖心性が自己愛の影響を大きく受けていることが分かり, 自己愛の高まりが対人恐怖心性を増大させていることを示した。