本研究の目的は, 学習方略との関連から高校生の学習観の構造を明らかにすることである。学習観を測定する尺度はすでに市川 (1995) によって提案されているが, 本研究ではその尺度の問題点を指摘し, 学習観を「学習とはどのようにして起こるのか」という学習成立に関する「信念」に限定するとともに, その内容を高校生の自由記述からボトムアップ的に探索することを, 学習観をとらえる上での方策とした。その結果,「方略志向」「学習量志向」という従来から想定されていた学習観の他に, 学習方法を学習環境に委ねようとする「環境志向」という学習観が新たに見出された。さらに学習方略との関連を調査した結果,「環境志向」の学習者は, 精緻化方略については「方略志向」の学習者と同程度に使用するが, モニタリング方略になると「学習量志向」の学習者と同程度にしか使用しないと回答する傾向が示された。また全体の傾向として, どれか1つの学習観には大いに賛同するが, それ以外の学習観には否定的であるというパターンを示す者が多いことも明らかになった。