本研究では不登校を経験し現在社会適応している成人にバウムテストを行い, 彼らの心理状態および対人関係を検討した。方法は不登校経験群と対照群の比較および不登校経験群を不登校期間, 社会適応形態を基準に分類比較し, 不登校経験者の描画に表れる特徴を分析した。心理状態および対人関係を評価する基準として, Stadeli (1954) の神経症サイン項目主サインと副サインの有無, 樹冠の形成段階, 大地の線の有無を用いた。その結果不登校経験群は対照群より神経症サイン項目の出現が多く, 樹冠や枝の異常や, 幹の基部の不安定な描写が見られた。樹冠の形成段階では立体描写や樹冠内の枝がないなどの描写が多かった。大地の線は線が無いものやブッシュや陰影が描写されているものが多かった。また不登校経験者の不登校期間が長期になるに従い主サインの出現が多く, 社会適応形態が非常勤やアルバイトの者は常勤や主婦の者に比べ副サインの出現や樹冠形態の未成熟が多い傾向が見られた。以上の結果より, 不登校経験者の心理的不安定さが示唆された。