日本文化における相互協調的自己観が個人に内面化される過程を発達的に検討するべく, 6つの年齢段階に区分される児童期後期から中年成人期にかけての調査対象者から,(1) 日常生活での社会的比較の頻度と様態,(2) 相互独立/協調性,(3) 批判的自己認識の程度,(4) 自己認識の手段についての認知, の4 種の指標が測定された。各指標の発達的変化について従来の知見が追認された他,(1) 青年中期以降, 他者志向的な社会的比較を通じて, 相互協調性や批判的自己認識, 及び自己認識の源泉の認知における日本的自己の特質が形成される,(2) 成人期以降は日本的自己の特質とは一見矛盾した現象が示されるが, 自己認識形成の過程は青年期と同一である,(3) 青年前期までは, 社会的比較は相互独立性をもたらし, 相互協調性が肯定的自己認識を生む等, 自己認識形成の過程は青年中期以降と異なる, という知見がパス解析を通じて得られた。