平仮名の読みの習得に著しい困難をもつ, 小学2年生の男児A男の認知特性を分析し, 特性に基づいた読みの指導を行った。A男は医学的には読字障害 (reading disorder) と診断され, 認知特性では全般的な知能の水準に明確な遅れはないものの, 継次処理過程のうち特に聴覚性の短期記憶能力の弱さ, および抽象的な視覚刺激の探索や短期記憶の困難さをもっていた。読み困難の要因として指摘されることの多い聴覚処理の問題に加え, 視覚性の能力にも弱さをもっていたため, その特性に応じた指導が必要であった。指導は平仮名文字の形態への認識を高めるとともに, 文字とその読み (音) との間に単語を介在させ, 文字-単語 (意味)-音 (読み) の連合を促した。その後, 特に文字一音対応の処理の効率化によって, 単語の音読・読解を目指すべく, ドリル課題と刺激の瞬時提示課題を行った。これらの指導を通して, A男の読みの困難さから見れば, 比較的早期に単語の読解が可能になったと考えられる。