本研究では, 児童の感情認知を促すための介入方法の効果について検討を行った。被験者は小学校の 5年生113人であり, 実験計画は, プリ・ポスト・デザインによる, 実験条件, 統制条件1つずつの統制群法であった。実験条件の被験者には, 感情認知の手がかりについての知識に対する接近可能性を高めるために, さまざまな子どもが登場するビデオを見せて登場人物の感情を推測させ, 推測した感情をその手がかりとともに記述させる訓練を, 11日間にわたって行った。また, 統制条件の被験者には, 自然や動物に関するビデオを見せ, それらについての感想などを記述させるという, 感情認知とは関係のない経験を11日間にわたってさせた。従属変数は他者の感情に対する注意の程度であり, プリ・テストおよびポスト・テストの前2週間の日常生活において他者の感情を認知した経験を, 認知対象の名前および状況とともに思い出すかぎり記述させ, その記述数を指標にした。収集されたデータを分析した結果, 実験条件の被験者の方が統制条件の被験者よりも他者の感情に気づくようになっていることが示され, 試みた介入方法に効果があることが例証された。