本研究の目的は, 従来の研究よりも高い年齢の被験者 (小学5年生から高校2年生まで) を対象として, crowdednessタイプの密度概念の質的理解の発達過程を, 均等分布の理解と関係概念の定性的理解という2つの側面から明らかにすることであった。課題は, 均等分布の理解, および数, 長さ, 密度のいずれか二者および三者の関係の理解を調べるための課題からなっており, ランダムに問題を綴った冊子を配布し, 学級ごとに一斉に実施した。その結果, 中学1年生から高校2年生にかけての時期に, 高校1年生を最低とするU字型の発達傾向が示された。これは, 小学5年生 (11歳) から中学2年生 (14歳) にかけて停滞していた三者関係の理解が, 以降急速な発達を始めることにともなう知の再体制化のためであると考えられる。平均的にみると, 第3位相の高校2年生では, いずれの理解についてもよく理解していた。しかし, 個人レベルで各理解の獲得・未獲得を調べたところ, 全ての理解を獲得している者の割合は5割に達していなかった。以上のことから, 数と長さによって決まる密度概念の質的理解は, 中学2年生 (14歳) 以降に大きく発達するが, 高校2年生 (17歳) でもまだ完全には獲得されない可能性が示唆された。