達成動機づけ研究において幼児期を対象にした研究は多くない。この理由として幼児では達成動機づけに関する個人特性の測定が難しいことがあげられる。そこで本研究では, 幼児にも適用できるように, 二者択一の強制選択の方式による目標志向性の測度開発を行い, その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。研究1では, 二者択一の強制選択方式で測定した目標志向性と他の達成反応との関連を検証することで, 測度の妥当性を検討した。この結果, 判定された目標志向性は失敗経験後の課題選択による挑戦性との関連を示した。研究2では, 3つの場面設定を行い各場面での目標選択の変動を検討した。場面を比較することによって, 目標志向性の領域を超えた安定性が示されるかを検討し, 3項目の尺度としての信頼性についても検討した。研究3では, 測度の経時的安定性を検証するため, 半年後に再テストを行い目標志向性の変動を検討した。この結果, 目標志向性は領域間では一貫性が低く, 経時的には比較的安定していることが判明した。また複数場面による判定は, 尺度として信頼性が低く, 実際に経験した場面をもとに選択させる方法が, いちばん達成反応を予測することがわかった。