本研究は, 処理水準説で説明されてきた形態・音韻・意味処理課題の再生率の違いが, 分散効果の原因説として提起された再活性化説によって, より合理的かつより具体的に説明・予測できることを実験的に検証することを目的とした。実験では, 形態・音韻・意味処理課題を, 1回呈示した場合と様々な呈示間隔で反復呈示した場合の反応時間と再生率が測定された。処理水準説のもとでは, 1. 浅い処理の場合は反復呈示しても再生率が上昇しない, 2. 反応時間は再生率と相関しない, と予想された。一方, 再活性化説のもとでは, 1. いずれの処理も反復呈示によって再生率が高まる, 2. 再生率が最大となる反復間隔は, 意味処理ほど広い, 3. 加重累積反応時間は再生率とロジスティックな相関を成す, と予想された。実験結果は, 処理水準説のもとでの予想と相反し, 再活性化説の予想を支持するもので, これらの課題を処理した際の記憶定着のメカニズムの説明には, 処理水準説よりも, 再活性化説を適用した方が妥当であることが示された。