本研究では, 不適応的・病的な現象として問題視されやすい依存を, 一般的な対人関係においてより積極的で適応的なものとして捉え, そのような依存を測定するための, 情緒的依存・道具的依存からなる対人依存欲求尺度を作成し, その信頼性と妥当性を検討することを第1の目的とした。さらに, 対人依存欲求尺度と, 肯定的特徴として他者への信頼感がどのように関連するか, これまで依存的であることの特徴として考えられてきた自分への自信のなさや意思決定に対する自己評価の低さとの関連も含めて検討することによって, 依存のより肯定的, 適応的特徴を示すことを第2の目的とした。447名の大学生を対象とし, 調査を実施した。因子分析の結果, 情緒的依存・道具的依存の2つの下位尺度からなる20項目の尺度が開発された。この尺度の信頼性と妥当性の検討を行ったところ, 両下位尺度において十分な信頼性と妥当性が確認された。さらに, 概ね対人依存欲求尺度と自己信頼感との間に有意な関連がみられなかったが, 女性においてはむしろ情緒的依存欲求が高いほど自己信頼感が高く, 依存欲求が高い人は他者信頼感が高いという依存の肯定的・適応的特徴が見出された。意思決定に関する自己評価においては, 情緒的・道具的依存欲求どちらにおいても高い人は, 自己評価が低かった。