本研究では, 東アジアに位置しながら算数に関する指導内容と指導方法の異なる日本と中国 (普通校, 先進校) の児童の数学的思考の特質を明らかにし, 指導内容・指導方法との関連を検討することを目的とする。日本と中国の小学校6年生632名を主たる対象として, 学習内容と直接関連する課題 (計算課題文章題) と概念理解を問う課題 (乗除法作問課題分数図示課題内包量比較課題) が実施された。児童の解答内容を分析した結果, 数学的思考の水準 (正答率) に関して, 日本と中国の差や中国の校種による差は, 概念理解課題に比べて計算課題や文章題で大きかった。概念理解課題における数学的思考のプロセスに関して, 中国の普通校では, 数と数を関係づける倍による解法や既習の関係式に結びつけた解法が多くみられ, 中国の先進校では, 特に後者の解法の多さが顕著であった。一方, 日本では, 計算結果 (単位あたり) の意味を考慮した判断が多くみられたが, 言葉による方略の意味づけには中国との差はみられず, 中国に比べて無答率が高かった。これらの数学的思考の特質に影響を及ぼす背景として, 教科書の内容などに反映されている指導内容・方法について検討し, 算数・数学教育への示唆について考察した。