本研究では, 授業進行から外れた子どもの発話に対する教師の対応の意味を検討した。5月から12月に渡る, 小学校2年生の算数と国語の一斉授業44時限分の発話記録に対し, カテゴリーの数量的分析と発話事例の質的分析を行った。カテゴリー分析によると, 連想的発話は多くの子に見られ, 無関連発話や拒否は特定の子に多く見られるという学級の特徴が表れており, 教師は発話の種類に応じて対応を使い分けていた。特に割り込みという形式面で外れた発話には明確な注意を行い, 内容面で外れた発話のうち, 連想的発話には無視, 無関連発話や拒否には受け入れがなされていた。事例分析によると, これらの使い分けは, 授業の構造化, 子どもの文脈の許容と活用, 学級内の人間関係調整を巡って, それぞれが必要なレベルに応じて移行しながら行われていた。低学年の学級の場合, 授業進行から外れた発話は, 学習指導にもマネージメントにも関わっており, 教師は両者を明確に区別せず, 揺れ動きながら意思決定することが示唆された。