本論文は, 統合保育への支援の一貫として企画・運営した研修実践を, 協働による互恵性をキーワードとして分析した。研修実践は実践報告と実践交流から成り立つが, 報告準備段階から保育者と相談員 (心理の専門家) の協働作業が始まり, 一連の協働を通して, 次のようなふりかえりと互恵的な学びが行われることが分かった。第1は, 準備段階で, 相談員が保育者の保育意図や悩みに注目してその明確化を求めることにより, 保育者は保育意図や転換点をふりかえった。そのふりかえりを複数の立場の保育者間で行うことにより, 保育者は自分の立場に特化した専門性を意識化した。相談員も巡回相談活動が保育にどのように活かされたかを学んだ。第2は, 実践報告をテキストとした実践交流により, 異なる園の保育者同士の間でふりかえりの重要性への気づきがなされ, ふりかえりのモデル伝達がなされた。この保育者のふりかえり作業に立ち会うことにより, 心理の専門家をはじめ他専門家も保育者との連携を模索することを促された。最後に, 心理の専門家の研修への貢献を, 相談員としての側面と心理学研究者としての側面との2側面から考察した。