重要な他者との関係は, 社会的文脈の中でのアイデンティティ形成について形成する際の最も基本的な単位であると同時に, 全体的な問題にもつながる文脈であると考えられ, この文脈を取り上げることは意義がある。本研究は, アイデンティティ研究として, 重要な他者との関係において構築される関係性そのものの発達を扱い実証的に明らかにすることを目的とする。また, 関係性発達がアイデンティティ発達とどのように関連しているかについても検討を行う。まず研究1では, 成人中期の男女27名を対象に半構造化面接調査を実施し, ライフサイクルを通した重要な他者との関係の中で構築される関係性として, 自分自身の人格や対人関係のあり方への影響の認識について検討した。その結果, 関係性様態として, 再体制化完了型, 現状満足型, 否認・軽視型の3タイプが見出された。様態別にプロセス分析を行ったところ, 3タイプ間でプロセスの進行の程度の違いが確認され, 重要な他者との関係の中で自己自身のあり方が問い直されるという主体的位置づけが重要であることが見出された。研究2では質問紙調査を実施し, 関係性の発達と心理社会的発達課題の達成度との関連の検討を行った結果, 関連が示唆された。