本研究の目的は, 青年を対象として「環境からの要請と適合した個人の属性を持つときは, 適合しない個人の属性を持つときよりもより適応的である」という適合の良さ仮説を検証することであった。したがって, この視点では, 個人変数や環境変数のみよりも, 個人と環境の適合の変数のほうがより適応を予測すると考えられる。中学生, 高校生, 大学生に心理的欲求尺度, 心理的欲求に対応して作成された学校環境からの要請尺度, 学校への適応感尺度を実施した。個人-環境の適合度を測定するため, 心理的欲求尺度得点から学校環境からの要請尺度得点を引き, 個人-環境の不一致得点を算出した。そして, 各不一致得点の高群, 低群を独立変数とし, 学校への適応感尺度を従属変数としてそれぞれt検定を行った。その結果, 不一致得点が低い群のほうが適合度得点の高い群よりも学校への適応感を感じていた。また, 心理的欲求尺度, 学校環境からの要請尺度, 不一致得点と学校への適応感との関連について検討するため, 相関係数を算出した。その結果, 概して, 心理的欲求尺度や学校環境からの要請尺度よりも不一致得点のほうが学校への適応感との相関係数の絶対値が高かった。以上の結果から, 個人-環境の適合性の視点から適応の問題にアプローチしていく必要性が示された。