中学1年から3年までの生徒302名を対象に集団式注意機能検査バッテリーを実施した。下位検査を分析した結果, 異なる注意機能の発達的推移が明らかになった。すなわち, 行動抑制成分は年齢推移に伴う向上が認められなかったのに対し, 選択的注意成分は中学生においても有意な成績の上昇を確認した。相関分析の結果, 行動抑制成分は持続的注意よりも選択的注意と密接に相関していることが判明した。教師によって注意に問題があると評定された生徒は, 行動抑制指標において成績が低いことが見出された。注意の問題についての自己評定の結果が教師評定の結果と一致していた生徒は, 選択的注意指標において優れた成績を示した。このことから, 注意の問題をもっていたとしても, そのことを自己認知できている生徒は, 注意の問題をもっていない生徒と同程度に, 選択的注意課題を遂行できるという可能性が示唆された。