本研究は, 密接に関連する状況間の移動と学習に関する状況論的な諸議論に新たな知見を追加するため, 看護学校内学習から周手術期の臨地実習へ移動する看護学生の学習過程を検討した。研究1では観察を行い, 「校内では, 学生は, 根拠に基づいて看護することの重要性が実感できず, その学習が希薄になってしまう傾向にあるが, 臨地実習に入ると, その重要性をより実感して厳密に実施することを学習する。それはなぜか。」という問いを設定した。研究IIでは, 実習期間終了直後の学生に半構造化面接を実施し, 修正版グラウンデッドセオリーに基づく分析を行い, この学内と臨地の差異の背景と考えられるものの一つを,【時間の流れ】の相違 (異時間性) として概念化した。臨地では, 学生の現在の行為が未来の患者の容態変化と繋がっている (共時) 上, 学生は, 患者の変化のつど, 継続的に行為を調整していく (通時) が, 学内では, 学生の現在の行為は看護対象の未来の容態変化ではなく, 合格・不合格と繋がっている (共時) 上, 対象と行為の関係が一時点で終わる (通時)。こうした異時間性が, 根拠立ての重要性の実感の差異を説明することが示唆された。