本研究の目的は, 中学生579名を対象とし, 生徒の数学と国語の学業成績の向上における社会的比較と学業コンピテンスの影響を探ることであった。まず, 社会的比較の対象として, 従来扱われてきた学業的遂行の結果 (遂行比較) のみを扱うのではなく, 勉強の方法や理解度といった対象 (学習比較) も加味した社会的比較行動尺度を新たに作成した。そして, その尺度を用いて, 生徒の学業成績の向上における社会的比較と学業コンピテンスの影響を検討した結果, 数学の教科においては, 外山 (2006) の結果と同様に, 学業成績の向上に学業コンピテンスがプラスの影響を及ぼすが, その影響の大きさが遂行比較によって異なることが示された。また, 国語の教科においては, 学業成績の向上において, 学業コンピテンスと学習比較の交互作用的な影響が見られ, 学業コンピテンスが低い人のうち, 学習比較をあまり行わない人は学業成績が低下するのに対して, 学習比較を行う人は学業成績の向上が見られることが示された。