本研究の目的は, 熟練教師による話し合いを支えるグラウンド・ルールの共有過程を明らかにすることであった。小学校6年生1学級 (女児21名, 男児18名) の国語単元における発話について, ルールの意味や働きかけの意図に関する教師へのインタビュー回答を踏まえながら, 3種類のコーディングによる定量的分析を行うことで, ルールの内容を整理し, ルールが示されていた談話過程を特定した。さらに, その談話過程の特徴を, 定性的分析によって明らかにした。分析の結果, 教師は即興的思考を絶えず働かせながら以下のように働きかけていたことが明らかになった。(1) 子どもが主体的に学び合うことの妨げになっている認識を, やりとりの文脈の中で感じ取っていた。そして, その認識を問い直し, 新たに構成するため, 独自のルールを生成していた。(2) ルールはやりとりの文脈に固有な内容を持つため, 教師からの一方的な提示では, 具体的な意味や重要性を子どもに気づかせることはできないと考えていた。その考えのもとに, 教師は話し合いの流れの中に現れたルールを取り上げ, 意味づけることで各ルールを子どもに示していた。