本研究では, 自己複雑性理論に基づき, 抑うつの促進ならびに低減プロセスを自己評価が媒介するというモデルを検証した。大学生と専門学校生計95名を対象に, 自己スキーマの精緻性を測定するために自己記述課題を, 自動思考の頻度と抑うつを測定するために質問紙を実施した。構造方程式モデリングによる分析を行った結果,(1) ネガティブな自己スキーマの精緻性は, ネガティブな自動思考に媒介されて抑うつを促進していること,(2) ポジティブな自己スキーマの精緻性は, ポジティブな自動思考に媒介されて抑うつを低減していることが明らかとなった。これらの結果から, 抑うつの促進および低減プロセスにおいて自己評価が果たす役割が示唆された。また, 検証されたモデルに基づき抑うつへの介入について議論した。