本研究は, 思春期の身体発育のタイミングと抑うつ傾向との関連において, 身体発育のタイミング (以下, 発育タイミング) を客観的な発育タイミングと主観的な発育タイミングの2つの観点から捉え, 発育タイミングが直接抑うつ傾向に影響するのか, 媒介要因を介して関連するのかを検討することを目的として実施した。中学生503名 (男子252名, 女子251名) を対象に思春期の身体発育の発現状況, 主観的なタイミングの認知, 現在の体重に対する評価, 身体満足度, 露出回避行動, 抑うつ傾向について測定した。その結果, 1) 男女とも発育タイミングから抑うつ傾向には直接的な関連はみられず, 媒介要因を介して関連していた。2) 男子は主観的な発育タイミングが, 女子は客観的な発育タイミングが身体満足度と結びついていた。3) 男子は早熟なほど身体満足度が高く, 抑うつ傾向が低いが, 早熟な女子は身体満足度が低く, 抑うつ傾向が高かった。4) 男子では公的自意識の高さは身体満足度, 露出回避行動と結びつき, 抑うつ傾向と関連していたが, 女子の公的自意識の高さは身体満足度と結びつかず, 露出回避行動と結びついて抑うつ傾向と関連していた。