構造方程式モデリング (SEM) では柔軟なモデル構成が可能であるために, モデルの評価・選択が重要になる。統計的モデル選択において基本となる統計量に尤度比検定統計量 T があり, SEMでもこれが漸近的にx2分布にしたがう性質を利用した検定が可能である。しかし, 標本サイズが小さいとき検定統計量 T の標本分布はx2分布から正方向に逸脱する。逸脱の度合いは1因子あたりの観測変数数が大きいとき, とくに大きくなる。通常得られる教育心理学データの標本数程度では, この逸脱のため, 適切なモデル選択が行えなくなってしまう。また, 適合度指標の大部分はx2分布にしたがう T の関数として構成されるので, T の分布のゆがみが直接的に波及する。そこで, 我々は今回 T にBartlett補正を適用し, そのx2分布への近似精度を向上させる方法を提案する。モンテカルロ実験により, 提案した方法が T の標本分布のx2分布に対する近似精度を大幅に改善していることを確認する。