自尊感情は学業領域や運動領域などの領域別自己評価だけでなく, 各領域に関する重要度 (自己判断による自分にとっての重要さの程度) も関与して形成されると考えられている。吃音が大きく関連する領域とは, 話す領域である。本研究の目的は, 吃音児の自尊感情の形成において, 話す領域に関する自己評価と重要度が関与しているかを検討することである。吃音児338名, 非吃音児692名に自己評価尺度を実施し, 以下3点を明らかにした。(1)自尊感情得点の説明変数として, 容姿, 友人関係, おこない (道徳的に望ましい行動) 領域に関する重要度で重み付けした自己評価得点と親子関係領域の自己評価得点が両群に共通して抽出され, さらに話す領域に関する重要度得点が吃音児群にのみ抽出された。(2) 話す領域に関する変数が自尊感情得点を説明する割合は, 吃音肯定群より吃音否定群のほうが大きかった。(3) 話す領域を重視する傾向は吃音に否定的感情をもつ子どもにみられた。また, そのような子どもの親は吃音に対し否定的態度をもっていた。