本研究では, 近年諸外国で研究が盛んに行われているforgivenessの概念に注目し, ゆるし傾向性として実証的に取り上げ, わが国の中学生・高校生を対象に, ゆるし傾向性と外在化問題・内在化問題との関連を検討することを目的とした。研究1では, 中高生574名を対象に, ゆるし傾向性尺度の作成を行った。因子分析を行った結果, 「他者へのゆるし傾向」,「自己への消極的ゆるし傾向」,「自己への積極的ゆるし傾向」の3因子からなるゆるし傾向性尺度が作成された。研究2では, 中高生553名を対象に, ゆるし傾向性尺度の信頼性, 妥当性の検討を行った。その結果, 十分な値の信頼性, 妥当性が確認された。研究3では, 中高生556名を対象に, ゆるし傾向性と外在化問題 (身体的攻撃・関係性攻撃), 内在化問題 (抑うつ・不安) との関連を検討した。相関, 重回帰分析により検討を行った結果, ゆるし傾向性と外在化問題, 内在化問題との間には, 負の関連が示された。従って, 中高生にとって, ゆるし傾向性は, 外在化問題, 内在化問題の軽減に有効である可能性が示された。