本研究では学習者が, 科学的概念と日常経験知との関係を, 対話を通して解釈できることを「理解」と捉えた。そして, この理解達成を促進する方法として, 教師が学習者らの発話を引用しながら, より深い解釈を行う対話へ誘導する「再声化(O'Connor & Michads, 1996)」に基づいて作成した介入法を取り上げ, その効果の検討を行った。大学生26名を対象に, 2名1組の実験参加者組に分かれ, 対話を通して課題とした科学的概念と日常経験知の関係を解釈するよう求めた。そして, ここで作成された解釈が両者の関係を十分に説明できないものであった場合, さらに対話を続けてもらい, 同時に調査者が再声化介入法に基づいた介入を行った。その結果, 再声化介入には, 1) 理解の達成に効果があるトランザクション対話 (Berkowitz & Gibbs, 1983) を増加させ, 2) 説明内容における日常経験知のメタファーも増加させる効果があり, 最終的に概念理解を達成できる実験参加者を有意に多く生じさせたことが明らかになった。以上の結果から再声化介入法には, 理解達成を促進する効果があると考えられ, 本介入を活用した新たな授業実践の可能性について考察がなされた。