本研究では, 小笠原村父島で行われたエコツアーの参与観察を行い, ツアー参加者へのインタビューにおける語りを社会文化的アプローチによって検討することにより, 環境の学びのプロセスの特徴を明らかにした。持続可能性のための教育の視点からエコツアーにおける環境の学びの4つの側面を導き, これらがいかに語られるかを, ツアー経験の参照, 他者の言及に焦点づけて分析した。その結果, 1) エコツアーにおける環境の学びのきっかけとなるツアー経験の内容は一様ではなく, 各参加者はさまざまな活動において学びを触発されていること, 2) 自分自身の生活環境を含む地域環境の持続可能性に関する語りは, 交流を通じて見通すことが可能になった, エコツアーの活動に従事する人びとの小笠原の地域環境に対する認識や保護に取り組む姿勢を媒介としてなされることが示された。この結果から, エコツアーにおける環境の学びは, 単線的なプロセスモデルでは適切にとらえられないこと, 各参加者の学びのプロセスを把握する上で社会文化的アプローチが有効であることを論じ, 最後に本研究の知見がエコツアーのプログラム編成に与える示唆について考察した。