本実験は, 第II実験と同様, 2つの課題状況において, 集団決定, 集団討義, 講義決定, 講義の諸方式の実践効果に関する比較研究を試みたのである。課題状況は, (1) 漢字の書取を二者択一のいずれの時間に実施するかを自己決定して, 自己決定した時間に実施すること, (2) 自己決定した時間に, 標準量以上の漢字の書取りをすること, であった。被験者は中学2年生及び小学校6年, 5年, 4年, 3年, 2年生, 計711名。 実験の結果を要約すれば次の如くである。 (1) 課題 (A) の状況では, 中学2年及び小学高学年において集団決定, 集団討議, 講義決定, 講義の諸方式間に有意差が見出せなかった。このことは第II研究の結果と同一であった。小学低学年においては講義が他の方法より効果が大であった。 (2) 課題 (B) の状況では, 中学2年及び小学高学年において, 課題 (A) と同一被験者で, 集団決定, 集団討議, 講義決定, 講義の順位で効果が見出された。この結果は, 従来の諸研究及びわれわれの第II研究の結果と一致する。 なお, 小学低学年においてはかかる一義的傾向が見出されなかった。 (3) この結果より, 集団決定や集団討議が講義方式より効果的であるという命題は, 課題状況のもつ特性及び被験者の発達段階等の諸条件と無関係に定立することは出来ない。 (4) 定められた方向に, グループの意見の一致度が高ければ, その方向に実践度は高くなる。この結果はBennettの結果及びわれわれの第II研究の結果と一致するものである。 (5) 課題に対する関心度の高低は実践効果に有意な影響はなかった。この結果も第II研究と一致するものである。 (6) 集団の凝集度の高低も実践効果に有意な差を示さなかった。これも, 第II研究の結果と一致するものである。 (7) 被験者のパースナリテイの相違も実践効果に有意な差を示さなかった。これも第II研究の結果と一致するものである。 (8) 知能の相違による効果差は見出されなかった。