外傷性脳内出血後に生じた同語反復症の一例について4年間の神経心理学的変化を観察した.受傷から約2ヵ月間の意識障害遷延後,反響言語を伴う著しい同語反復と精神活動の低下を示した.それらの症状は徐々に改善し約2年後には言語性IQは80近くまで上昇した.同語反復も軽減したが依然として残存し,その特徴は,思考力を要求されるような難しい課題でより強い反復を示し,反復の形態では変化はみられなかった.また音声分析の結果から,反復される言語音の速度や音量に変化は認められなかった.上記症状の責任病巣は,CTやMRI画像および脳血流imageから右前頭葉皮質から白質深部にかけての広範な領域と考えられた.本症例においては語句の反復が難しい課題でより強くみられたことや,精神活動の回復に伴い同語反復が減少したこと等から,同語反復症を惹起し得る要因として,高次精神活動に伴う発話運動controlの障害が示唆された.