我々は失語症者の長期経過を知る研究の一環として, CT scan上,前頭,側頭,頭頂葉皮質のいずれにも損傷の及んでいる広範病巣症例が,標準失語症検査 (Standard Language Test for Aphasia) 成績上どこまで改善しうるのかを検索した。 対象は,上記の条件の他,発症後3年以上を経過した失語症者32名。いわば到達レベルとも言える長期経過 (平均7.0年) 後のSLTA成績は極めて軽度から重度まで広く分布した。発症年齢別にみると,40歳未満例は,以後例より,総合評価点においても,また全項目での到達平均得点でも有意に良好であった。また改善が良好であった40歳未満発症例の各項目平均得点が,非失語症者の マイナス1標準偏差を,大きく下回ったのは,「口頭命令」と「文の復唱」の2項目であった。 リハビリテーションの実施にあたっては,発症年齢による予後の差を十分に考慮する必要が示唆された。