低酸素脳症の後遺症として特異な作話とこれに関連した行動異常を呈した1例を報告した。この症例は、一般的な知的能力及び瞬時記憶は保たれていたが、逆向性及び前向性健忘、並びに著しい作話が認められた。作話の多くには次のような特徴がみられた。 (1) 過去に受けた刺激内容を発話に取り込んで展開したり、 (2) 自分と無関係なできごとをあたかも自分の体験であるかのように述べたり、 (3) 作話生産の時点では、作話内容に出現した事前の刺激について、その内容の想起のみならず、そういう刺激を受け取ったという事実の想起すらも困難であった。さらに注目すべき点は、テレビの登場人物を実際に探しに行くなど、作話内容が患者の実際の行為面にまで及んだ点である。これらの現象の臨床的側面の詳細を報告し、その発生機序についても若干の考察を加えた。