左中心前回下部の脳梗塞により prosody の障害を主体とする持続性で重度の語唖症状を呈した症例を報告した。語唖症状の代償機能については,劣位半球対称領域 (Nielsen,1946=劣位半球代償説) または Broca 野の周辺領域 (Levineら, 1979=優位半球広範囲障害説) の役割を重視する二つの考え方が示されている。本症例は右 (劣位側) 中心前回下部に陳旧性病変を有しており,そこに存在するはずの語唖に対する代償機能が働かなかったと考えると,本症例にみられた語唖症状の持続が説明 (劣位半球代償説) 可能であると思われた。