理解障害の性質がほとんど明らかにされてない伝導失語の聴覚的文理解について,構文を理解する能力およびそのときの構文の持つ構造上の特徴の両面から検討した。対象は伝導失語7例 (発症後平均7.4ヵ月,男性4例,女性3例) 。これらに失語症構文検査 (藤田 ; 試案IIA) を施行し,その成績を分析した結果,理解ストラテジーの階層性の存在を示唆する結果が得られた。また理解に影響を与える文の構造上の特徴として助詞,語順,文中の動作主の位置や補文構造について考察した結果,助詞の理解が最も不良であることが示唆された。助詞についで語順が理解に強く影響を与える可能性も示唆された。また伝導失語は,理解困難な構文に対して,語順のストラテジーに加えて動詞句を形成し目的語に主題を与えるストラテジーや,受動態や能動態などの文型の種類に応じた語順ストラテジーを用いる能力があることがあることが示唆された。