脳損傷者53例, 健常者24例に頭文字およびカテゴリーによる Word Fluency Test および Modified Stroop Test を施行した。前頭葉損傷群の頭文字による Word Fluency Test の成績は他部位皮質損傷群に比較し有意に低下していた, 次に前頭葉損傷群において, Word Fluency に対しステレオタイプの抑制障害が与える影響を発動性要因を考慮した上で検討した。すなわち, ModifiedStroop Test の単純な色名呼称に要する時間を用い, 前頭葉損傷群を発動性低下が強いと考えうる群と発動性低下が少ないと考えうる群に分けたところ, 後者で頭文字による Word Fluency Test の成績と Modified Stroop Test における抑制障害の指標との間に負の相関が認められた。したがって, 発動性欠如の程度が軽度と考えうる前頭葉損傷群における Word Fluency にはステレオタイプの抑制障害が関与すると考えられた。