単語の了解に関する言語モダリティ間の関連性とカテゴリー特異性の問題を取り上げた。単語の聴覚的理解, 漢字読解および仮名読解の間に成績差を示す重度失語症19例に対しモダリティ間言語促進を行った。その結果, 漢字読解後に聴覚的理解の促進が見られ, 漢字読解・聴覚的理解の前刺激では仮名読解の促進は見られなかった。仮名読解には仮名1文字から音韻への変換過程が介在すると見られ, 語彙を単位とする聴覚的理解および漢字読解との間に乖離が生じたと考えられた。また2例の Wernicke 失語症例に対し 11カテゴリーにわたる単語の聴覚的理解, 漢字読解および仮名読解を行った。両症例とも良好なカテゴリーと不良なカテゴリーとでは正答率に差が見られ, モダリティによってもその差は一貫していた。この結果から言語システムと他の感覚・連動的諸要素との関連による意味表象の成立について考察した。