呼称障害に対して触覚的手がかりおよび聴覚言語的手がかりのいずれが有効であるかを検討した。対象は WAB 失語症検査の物品の呼称課題において,触覚的手がかりおよび聴覚言語的手がかりの両方を提示した失語症患者 60例( Broca 失語 18例, Wernicke 失語 18例,健忘失語 12例,全失語 4例,その他 3例,分類不能 5例)である。結果は, 1) 触覚的手がかりが有効であった症例は3例で,うち2例は聴覚言語的手がかりも有効であり,触覚的手がかりだけが有効であったのは 1例であった。2) 聴覚言語的手がかりが有効であった症例は 41例で,うち前出の 2例は触覚的手がかりも有効であり,聴覚言語的手がかりだけが有効であったのは 39例であった。3) 聴覚言語的手がかりだけが有効であった例では聴覚呼称と聴覚言語呼称との成績の相関が高かった。4) 聴覚言語的手がかりが無効であった群には有効であった群より頭頂葉あるいは側頭—頭頂葉の損傷を含む例が有意に多かった。