Broca失語の聴理解障害と病巣の広がりについて検討した。対象は8名の Broca 失語患者で,原因疾患は全例脳梗塞,その病巣は左第3前頭回三角部・弁蓋部・島・中心前回を含むものとし,病巣が広範で側頭葉におよぶもの,多発性脳梗塞,被殻出血は除外した。これらを頭部 CT の所見からI群 : 第3前頭回のうち三角部は保たれ弁蓋部に病巣が限局するもの,II群 : 第3前頭回の病巣がより大きく三角部と弁蓋部を含むものにわけた。SLTA の結果を比較するとI群は単語の聴理解は正常であったが,II群では理解障害が認められた。また病巣の大きさと関係なく単語より仮名一文字,短文の聴理解が悪かった。文字言語理解についても同様に単語より短文の成績が悪かった。以上より文章理解能力は両群で障害されていたが,語義理解は左第3前頭回三角部が比較的保たれたI群では正常であり,II群で障害されていたと考えられた。