両側被殻出血による大脳性難聴,いわゆる皮質聾の一症例を報告した。症例54歳,男性,右利き。聴覚伝導路は側頭葉皮質下で両側性に損傷されており,発症後1年以上経過しても大脳性難聴は改善しなかった。日常生活のコミュニケーションでは筆談が多用されていた。患者は読話能力の新たな獲得への希望を持っており,その前段階訓練としてキュードスピーチを併用した訓練を実施した。訓練終了後,絵画語彙発達検査やトークンテストで得点の改善をみたが,単音節から単語,単文へと音の長さが長くなるにしたがい,正答率は低下した。最終的には,キュー・サインを併用しても読話は実用レベルに至らなかった。