脳血管障害による左前頭葉および基底核を主体とした損傷により,失語とともに著明かつ特異な反響言語を呈した1例を経験した。症例は 63 歳右利き男性。右不全片麻痺。 MRI にて左前頭葉内側面,および左基底核前部から下前頭回後部,島,中心前回下部の一部を含み放線冠前部にもおよぶ領域に病変を認めた。本例の言語症状を詳細に記した後,以下の3点の特徴を抽出し,若干の考察を行い報告した。(1) 反響言語が自発話同様,非流暢性・努力性発話で,「努力性反響言語」 effortful echolalia (波多野ら 1994)であったこと。(2) 経過中,反響言語の量は了解障害の回復の程度ほど減少しなかったこと。(3) 反響言語が,反響言語なし (全失語) → 完全型,減弱型,部分型 (非定型超皮質性失語混合型) → 完全型,減弱型 → 減弱型,と変化したこと。