顕著に記号素性錯語 (paraphasie monémique: Lecours) を呈した失語症の3例について報告した。全例左被殻出血後に失語症を呈した。発話衝動の亢進はなく,著明な無関連錯語と保読を認め,喚語に際し顕著な記号素性錯語を認めた。意識は清明であり失見当識,病態否認などを認めず,知的能力も十分保たれていた。本報告の3例では,従来記号素性錯語の発現に関与するとされていた意昧での非失語的な要因は否定されると考えられた。語彙操作において,良好に保たれた皮質機能に対し,これを統御調節する基底核などの皮質下機能の障害が記号素性錯語の発現機序に関与している可能性を指摘した。