語の意味カテゴリー特異性障害を,語義失語像を呈する葉性萎縮4例およびヘルペス脳炎1例で横断的に,また,葉性萎縮3例で縦断的に検討した。全例に共通の障害部位は左側頭葉前方から中間部にかけてであった。9つのカテゴリー (野菜/果物,楽器,加工食品,スポーツ,動物,日常物品,乗り物,色,身体部位) に属する視覚対象計90個の呼称と指示を行なったところ,全例で両検査の成績は,色と身体部位で良好であったが,野菜/果物と楽器で不良であり,他のカテゴリーでは症例によりばらつきがみられた。葉性萎縮例につき語義の障害が進行した時点で,同様の検査を施行したところ,色と身体部分の成績は依然として良好であったが,他のカテゴリーでは成績の全般的な悪化がみられた。語義失語例では,色と身体部位のカテゴリーに属する語が保存されやすく,また,これらの語の概念・媒介系は左側頭葉前方から中間部にかけての領域とは異なる脳部位に存在することが推測された。