電文体発話を呈した左中前頭回後部の小出血の1例を報告した。典型的な電文体発話は我が国の Broca 失語ではまれといわれている。本症例は54歳,右利き男性で,発症時はBroca失語に相当する状態を呈し,その回復過程で,自発話のみに選択的に電文体発話が明確となった。特に,発話意欲の亢進した自発話に著明であった。書字には,電文体は認められなかった。理解力や喚語力は保たれ,文法処理能力も良好であった。本症例では,迅速かつ効率よく多くの情報を伝えようとする場合には助詞が省略され,その背景には文を構成し発話する過程で助詞の使用に関する何らかの機能不全が推察された。本症例は,文の構成に関与するといわれる左中前頭回後部に限局病変を有したことから同部位が文の構成過程に関与する可能性を示唆する1症例と考えられた。