小学校1年3学期,7歳6ヵ月時に発症した後天性小児失語症例を報告する。発症3ヵ月後の初診時,自発話は流暢で,構音障害,明らかな失文法語は見られなかった。語性錯語,字性錯語があり,相対的に保たれた聴覚的了解に比較した復唱の低下, conduite d'approcheが観察されたことから,成人失語症における伝導失語に近い状態像を示すと考えられた。本例は,文献の指摘するように,口頭言語についての予後は比較的良好であったが,教科学習において,躓きを示した。その中から,音読学習を取り上げ検討を加えた。仮名文字学習は時間をかけて成立したが,漢字学習は困難であった。それは主に,文字に音節を対応させることの困難によるようであり,背景には語彙学習の貧困さ,音韻操作能力の障害などの失語性要因の関与が考えられた。