アルツハイマー型痴呆患者の記憶障害に対する病識を, 質問票を用いて患者の記憶能力についての患者自身と介護者の評価の差をみる方法と医師による面接判断で評価し比較した結果, 両者は必ずしも一致しなかった。この理由として, 両方法の評価範囲の違いのほかに面接者や介護者の判断が正しくなかった可能性も考えられた。また, いずれの評価法でも, 病識低下は記憶障害 (ADASの記憶関連下位項目, WMS-R の General Memory Score), 全般的な痴呆重症度 (MMSE,ADAS の認知機能尺度, WAIS-R の FIQ), 発症からの期間, 年齢, 教育歴, 前頭葉機能尺度 (Fist-edge-palm test, Red-green test, Color-form sorting, RCPM), 他の心理検査 (WAIS-Rの VIQ, PIQ,Zung うつ尺度) と相関しなかった。脳機能画像による病変部位の検討も今後は必要であろう。